アトリエ虹色宇宙の歩み

私はデザインや刺繍を専門に学んだことがない。

なんなら、最もかけ離れた分野を学んできた。

しかも、その知識も就職と同時に不要なものになってしまった。(と思っていた。)

私は人より少し宇宙が好きな、小さな子供のいるただの主婦で、当ブランドをスタートアップする直前までは普通の会社員だった。


就職したばかりのころ、自分が人生の大半であまりにも「やるべきこと」を優先してきてしまったがために、自分に「趣味」がないことに気づき愕然とした瞬間があった。

会社に通うのは地に足が沈み込むほど辛かったが、全員がこんな気持ちで頑張っているのだろう、と気にも留めていなかった。

文字にすると辛そうに見えるが、意外とこういう人は多いのではないだろうか?

自分の「好き」が分からない人、嫌いな仕事でも頑張っている人。

私も特に疑問を抱かず人生を消化していっていた。周りの人のために「やるべきこと」をこなしていけば、いつか人生は終わるものだと。


ところがある日、「周りを幸せにするには、まず自分が幸せになることが重要だ」という考えに出会う。

あまりにも衝撃的な考えに、私の試行錯誤が始まる。

もちろんそこから一筋縄ではいかない。

自分の「好き」を思い出すことには数年かかった。

幼少期のことを振り返って、好きだったことを思い出し試してみた。

試してみても「好き」という感覚が鈍りきっていて、よく分からないこともあった。


そんな時、分かりやすいのは、色やデザインだった。

好きな色を選ぶというのは、感覚が鈍っている自分にも分かりやすい感覚だった。

そうやって少しずつ、「好き」という感覚を取り戻していった。


さらに数年後、退職を考えたことをきっかけに、本当に自分はどうしたいのか、良いも悪いも自分で受け止められるか、他人のせいにしないかを深く考えることになる。それは、自分とは何か、自分が本当に望むこととは何かという自己探究に繋がっていった。

会社を辞めることについて突き詰めて考えた副産物として、自分が本当に好きなこと、大切にしたいことにようやく辿り着けたのだった。


このときの気づきの衝撃は、宇宙の神秘を解明したかのような衝撃だった。

人はそれぞれ生を受けた瞬間、その神秘と向き合う権利を有している。

己の神秘の探究は生涯続く。

その探究を通じて生を謳歌することこそが、宇宙の真理に迫る唯一の方法ではないだろうか。


この想いがアトリエ虹色宇宙の礎となっている。